2022年9月13日(火)

朝4時に起床。二度寝はせずにさっと一階にエレベーターで降りて書斎で、執筆。今日は、何書こうかな、と思っていたら、何を書くのかとかいつも決まってない、僕は決めずに、その日の気分で、好きに、自分の思う通りに、人のことを気にせず、好きなだけやって飽きたらやめるのが体質として一番心地よいので、今は、なんか日記が書きたいと思って、なぜなら、今、我が家の中で何か大変動が起きているから。何か大きな変化が今起きていて、それに僕は気づいている。多分、みんな気づいている。僕たちは、みんなお篭り体質の四人で、どこにもいかなくても全然問題ないし、昨年、ニセコのパークハイアットで1週間宿泊した時は、3泊くらいは、どこにも行かずに、ホテルの中でぼうっとしてただけでむちゃくちゃ楽しかった。家でもそうだ。僕たちは誰も、他の人たちが入ってこない空間で、ぼんやりとするのが好きで、僕はソファでプレステ5をしている(彼はそれを日本国家からもらった10万円で自腹で購入した)ゲンに膝枕をさせてもらって、猫のふりをした僕がニャーニャー言いながら、ゲンを見上げると、ゲンは笑ってた。嬉しそうに見えた。ゲンは昼寝する時も、ベッドに行かずに、ソファで横で寝たらいいよ、と言う。一緒の空間にいればいいらしい。だから、鬱の時だって、パパはアトリエにこもって、一人で泣いたりせずに、みんながいるこのソファでぼうっと寝てたら、俺はずっとゲームしてても、きっとママも怒らないからいい感じなはずだから、次に鬱になったら、このソファにいればいいじゃんって言った。僕はそんなゲンとかアオとかフーとかを記録しておきたいと思って、坂口恭平日記を書き始めることにした。

「パパ、よく毎日書くよね、私は無理。パパ、twitterやめても、またここで毎日書くなら、一緒じゃん」とアオが言った。

「いや、全然違うよ。だって、いのっちの電話もしてないじゃん、今、誰からも電話出てないし、アオと話してて、突然電話で、二人の会話が途切れることもないじゃん」

「うん、それはすごいと思うよ。躁状態に入っているのに、いのっちの電話とtwitterをやめれるのはかなり進歩してると思う。それは信じられないくらいすごい。ずっといてくれたら嬉しいもん。私も、パパが家にいると安心するから、いてくれたら嬉しいよ」

僕はアオと一日一回、ハグすることにしたので、これで何も気にせずハグできるので、ハグした。というか、僕は夜はアオちゃんの足を揉んで温めてあげるし、結構、触る方だとは思うけど、触らせてくれてありがたい限りである。僕の手は異常に温かいのだ。

で、サクッと原稿を思うままに書いたら13枚。でも、やりすぎないぞー、と自分に優しく声をかけておこう。

午前5時に家に戻って、アオを起こす。アオは朝からテスト勉強、僕はヨギティーを入れてあげて、白ごはん、卵焼き、昆布の佃煮、お吸い物を作ってあげる。朝は僕が得意だから担当する。夜はフーちゃん。ゲンも早く起こしてほしいとのことで起こす。起きなさいと言わずに、両手を持って、このロボット動くのかな、とか独り言を言いながら、少しずつ持ち上げると自然とゲンは目を覚ました。

ゲンは今、スプラトゥーン3がでたばかりだから、プレステからスイッチに切り替えて、スプラ3をやってる。

「朝から2時間もゲームができたら、もうこれは満足だ、こんな幸せなことはない」

「じゃあ、ずっと学校に行かずにゲームしてたらいいのにい」と僕が言うと、

「親が言うんかい~」とゲンが突っ込んだ。ゲンは真面目で、学校の宿題嫌いなのに、やらなかったことがない。

「ゲンよ、そのうち、お金稼ぎ出したら、さ、稼いだ半分くらい、まじで税金取られるんよ、これが俺が一番やりたくないことなんだけど、やりたくなくてもやらなくちゃいけないのよ、だから、あなた、子供のうちは一切やりたくないことなんかせんでいいから、やりたいことを馬鹿みたいにやっときーよ」と僕が言うと、ゲンはターミネーター2の真似をして、親指をたてて、僕に示した。

で、ゲンを送り、アオとナチャソをカイエンに乗っけてまた学校へ。後部座席で二人は問題を出し合っている。親友と一緒にいる時のアオを見ていると、心の下の方が、すごく安心する。ナチャソに感謝である。父親である僕が、入学式の時に「一緒にアオと登校してください」とお願いするのもどうかと思うのだが、僕は人が誰と仲良くなるのか、すぐにわかるのだから仕方ないじゃないか。自分の特性はどんどん他人に使うのが一番である。そうすると、嬉しいことが起きる。ピンポンと鳴ると、山梨のえっちゃんからむちゃくちゃうまそうなシャインマスカットが届いた。友人が手作りしたとのこと。ほら、嬉しいことが起きる。僕の母親は僕のフルーツ好きなのを「きっと私が妊娠中に果物をたくさん食べてたからあなたはフルーツが好きなのよ」と言う。そっか、妊娠中に僕のことを産みたいと思ってくれたんだあ、と当たり前のことを時々不安に感じたりするから、そのことを思い出して、僕は母に感謝をした。

「さてと、どうかな、フーちゃん」

「うんとね、躁状態入っては、いる、ね、、、、。でもね、誰にも会ってないし、過剰なサービスだけど、それは全て家族に向けているから、いいかな。でも、毎日、車で送り迎えなんかしなくてもいいのに」

「でも、アオたち、とんでもない物量の教科書持って行かなくちゃいけなくて、馬鹿みたいに重いんだよ。俺なりのレジスタンスかも、学校がその気なら、俺も俺でカイエンで送り続けるぞ、と」

「してあげたいのはわかる疲れないように、ね。親友たち四人と福岡に連れて行ってあげるって言ったらしいじゃん。アオから聞いた」

「うん、あ、そっか、それは少しやりすぎかもね」

「うん、熊本の車で数十分くらいのところにあるクレアへ連れて行ったらどうかしら。テストが終わったら、連れて行くって言ったんだもんね。あそこなら無印良品もZARAもあるし、きっと楽しいよ」

「ナイスなフーちゃん、そうだ、まずはクレアにしよう、今日、迎えに行くときに言っとく!」

で、原稿書いたら、そのまま、絵を描いた。パステル画。今日は、昨日見た、鍼治療院の近くのドブ川の道。見ていると、僕は小学生の頃の帰り道を思い出した。その視線で見ている。パッと写真を撮った。僕もティルマンスみたいにCONTAX T3で撮影しようと言うと、museumスタッフであり、写真家のももちゃんが「T3ってさ、みんな持ってるから、なんか坂口くん違うと思うんだよね、T2も結構いいよ」と言った。いつか買いに行こう。CONTAXが好きなのはそうなのかも。今度、鬱になりそうになった時、創造しないけど創造的な行為をいくつか試そうと思っていて、そのうちの一つが写真である。フィルムで撮影して、プリントしたい。子供たちの記憶は全部僕のiPhoneに入っていて、いつもゲンは昔の懐かしい映像を見るのが好きだから、僕の携帯で見てるけど、これ、ちゃんとDVDに焼いて、映画みたいにして作ったらいい。写真もプリントした方がいいのになあ、っていつも思っている。それもこれからできるはずだ。なんてったって、僕は今、暇だから。いのっちの電話もtwitterも何十万人という人々に送る前提でやってて、その拡げに拡げきった手足を体を思考を、ビッグバン寸前の宇宙みたいに閉じ込めて、今度は家族、フーアオゲンに放出してごらん、ってのが今回の鬱明けの直感である。直感はいつも間違いない。みんな嬉しそうだ。

「躁状態になって、家にいることなんかほとんどなかったもん」とアオが言った。

ごめん。。。でも、もう僕は違うと思う。もう知らない人には声をかけない。知っている人、手を触れることができる人に力を全て注ぎたいと思う。

で、今日はお昼ご飯は、僕の鬱の看病で疲れている、フーちゃんにお礼をするために、料理家の高山ゆかさんのところへ。ゆかさんのアトリエがマジで可愛いのだが、そこで貸し切って、お昼ご飯。白木耳と柿の和物が美味しすぎた。他にも丁寧な料理がいくつか。その後、HOTOLIよいう可愛い雑貨屋見つけて、入ったら、この前、Debbyでランチを食べた、戸馳島でレストランをやってた方がたまたまジャムとかを運んできていて、顔を合わせた。また新しいお店を作るらしく、この前、美味しすぎたから、僕はパステル画を一枚、勝手に、天草の海の絵をプレゼントしたいので、店が完成したら教えてくださいーと伝えといた。みんなに僕の絵が届けーっていつも思ってる。で、京都と島原をウロウロしている溝グッちゃんからメールきて「京都で今やってる個展で、なんで、あの金峰山の絵がまだ残っとるんかい、あれいいのに」

「知らんよ、僕が好きな絵はいつも売れないもん」

「じゃあ、俺が買う」と言うことで、友達が買ってくれた、それが一番嬉しい。そういえば、この前、マヒトゥザピーポーから連絡きて、全感覚市っていうフリマやるんで、絵を出してくれたら無茶嬉しいって言われたので、新しく作ったニューアルバムと、絵を出したら、湯島の僕が大好きな絵だ、それは僕の担当編集者の竹ちゃんが買ってくれた。165000円もするのに。。。。ありがたい。ということで、今日も昨日も色々絵が売れたけど、フーちゃんがおめでとうって言ってくれなかったから、ついつい「おめでとう、頑張ったね!って言ってほしい、、、」と本音を言ってしまった。反省。フーちゃんは、たぶん、鬱になった時に落ち込みすぎないように、精神をチューニングしているから、喜ぶ時もうまく喜べない時があるんだと思う。フーちゃんは僕の仕事に対しても、決して理解してないわけではなく、むしろ大の理解者なのに、褒めてくれないだけで、ちょっと愚痴を言う僕が悪い。でも、伝えることも大事だと思うし、フーちゃんも今度からは、思っていることもできるだけちゃんと言葉にして、恭平に伝えるね、と言ってくれた。それはとてもホッとした。

二人でゆかさんのむちゃくちゃ美味しいご飯を食べて、嬉しかった。今度は家族四人で行こうと思った。

午後3時からはもちろん仕事もせずにゲンを迎え、アオの送り迎えをまたカイエンで、あとはずっとこもって、ソファに座ってゲームとか漫画とかで遊ぼうよとゲンがいうので、僕も寝転んで過ごした。夜はフーちゃんが親子丼を作ってくれた。美味しかった。

アオは毎日、日記を書かなくてもいいんじゃないかなって言ってくれた。寝るときに、僕はアオの足をさすりながら話をした。

アオは疲れてたのか、すぐに寝た。

僕はアオちゃんが引いてくれたカードを見ていた。今日のは、気づき。気づきは小さな悟りです、と書いてあった。

夜はフーちゃんともっと本音を布団の中でぶつけて話をした。子供たちもきっと聞いていたんだと思う。

僕はいつも両親の話を聞いていたから知っている。