Montreal Journal

Vol06. 0円ハウスなぜかSOLDOUT!

27th Nov,2008

朝、ホテルでゆっくりGIVE ME LITTLE MORE聞いていたらレセプションから電話があって降りてみるとマシューがいた。今からトロントへ行っちゃうそうでその前にどっかいこうぜーというのだ。出会ったばかりなのに、こうやって訪ねて来てくれて最後のドライブに誘うって行為は普通じゃできないと思う。本当に尊敬するしありがたい。で向かうはもちろん再び、フラードーム&HABITAT'67。しかし、マシューの車のタイヤがおかしそうな音をたてている。気にせずに出発。フラードームは凄いんだけど、やはりこれが広まらなかったのも頷けるというかやはり彼の全てのものは振動しているという思考の方が僕は好きだ。

そして再びHABITAT'67。マシューもモントリオール住んでいるのに中には初めて入ったらしい。二人でゆっくり味わう。

ジョイントしている部分が見えてよく分かる。とても40年前の建物には見えない。帰りにタイヤは案の定空気が無くなりゆっくりモントリオールの街を二人で話しながら気楽に走る。知らぬ間にこの街にも馴染んでしまった。次にギャラリーでモントリオール在住の日本人アーティストのシエさんと会う約束をしていたのだが、20分ほど遅れる。マシューと握手して再会を誓い別れる。シエさんの展覧会がMAIというギャラリーで開催されていたので案内してもらう。その後、カフェで麦酒を飲みながら話す。明後日、ブレイクダンスパーティーがあるらしい。気になる気になる。しかし、その日は重要な展覧会のオープニングもある。色々とまた蠢いてます。

その後、展覧会場に行くと、新聞記者のビルが待っていた。僕の仕事に非常に興味をもっているらしく、カフェに二人で行き三十分くらい熱いインタビューを受ける。モントリオールの人々はバンクーバーと同様にとても大きな関心を持ってくれているようだ。日曜日に記事になるらしい。楽しみだ。その後、0円ハウスの所に行くと、たくさんのホームレスたちが寄って来て皆色々と感想を言ってくれる。もちろん皆フランス語なのだが、何人かは英語も喋れて通訳までしてくれる。とても興味をもっているようだ。しかも、昨日0円ハウスに泊まった人が来て、暖かった、ありがとうと御礼を言われた。こちらこそありがとう。そして、今日泊まりたい人というのがもう既にいてバックを持って来ている。予約済みを言うわけだ。

当初は僕が泊まろうと思っていたが、そんなのより彼らに使ってもらう方が面白いから成り行きに任せることにした。さらに、一人のホームレスかなんだか分からないが興味を持ってくれている人がいて、なんと彼は展覧会が終ったらこの家を買いたいと言って来た。あんまり面白すぎるからいくらでもいいよと言うと、200ドルでどうだ、というので即答してオッケーを出した。友人にあげるのだそうだ。いきなり売り切れた。その後もたくさんのホームレスと話をして色んな情報を聞き出した。これは面白くなるかもしれない。一人、モントリオールの鈴木さんのような人に出会う。彼に明日話をきかせてもらうことにした。

これは何のマークも付いていない煙草。つまり手作りなのだ。インディアンが作っている煙草でこれは税金が全くかからないのでかなり安い。このようにモントリオールにもたくさんのならではの流通がある。ホームレスのほうが煙草が安く手に入るのだ。話を聞いていくうちに、こちらはこちらで色んな特徴を持っていることが分かって来た。家を建てると、警察に取り払われるが、それ以外は自由にやっている。皆黙って突っ立っている人ばかりの空間よりも、やっぱり僕はこういうところの方が好きだな。モントリオールの彼らにだけ通じる地図を作ってみたいと思いつく。

ホームレスネイションというテレビ番組の取材を受ける。左端はATSAのスタッフであるマリヒ。彼女の手には新聞が。興奮して近寄ってくるので何かと思ったら、そこには僕の記事が書いてあった。

新聞二社に掲載されていた。しかも、結構でかい。一ページ分使ってくれている。二日目に熱く喋ったところだ。やっぱりそういう時はいつもガンガン喋った方がいいのだな。今までで一番大きい扱いかもしれない。それによりまた人が集まって来た。色んな人がウェブサイトを見ただの、新聞見ただのと言って来てとにかく色んな話をする。

そして今日の宿泊者は早めに午後9時頃もう0円ハウスホテルの方に入っていった。僕も一旦家に帰り、前回ウィニペグの展覧会のオープニングで出会ったカナダ人、デビッドと部屋で待ち合わせする。麦酒を持って来てくれたので部屋で乾杯し、久々の再会を喜び話をする。彼は有能なカメラマン。しかし、一切のコマーシャルな仕事もやらないし、展覧会もやらない。ただ純粋に写真を撮り続けている男。そういう男、大好きである。

彼がデビッド。ブレイクダンス好き。だから明後日一緒にいこうよと誘う。その後、外に出て夕食を食べて、別れる。僕はまた展示場へ戻る。もう既に午後11時を過ぎている。展示場に戻ると、まだみんな起きて火に当たって喋っていた。

ホームレスである彼がハーモニカを一人で吹いていて、誰かに乗ってきてほしそうに吹くもんだから、ついつい、JBばりに声を張り上げてしまい、すると彼喜んで、ピーピー、ブルースハープのように吹き出すもんだから、二人で踊って歌った。「Petit Family」と口ずさんでいるので、それを歌にして合わせたら彼、興奮しちゃって、そのまま30分ぐらい二人でやっていた。二人のセッションが終った後の晴れ晴れとした彼の顔。雪がちらつく。こうやって、きちんとグルーヴを作って、裏打ちで乗ったりすると、喜んで反応してくる。ただ歌えばいいのではないのだ。そんなの退屈なんである。誰にとっても。歌うならグルーヴを。裏打ちを。つまりクリエイティブなリズムをこういうところでも真剣にぶつけないと会話ができないのだ。ようやく僕も彼らの内部入って話を聞き出せるようになってきた。

0円ハウス -Kyohei Sakaguchi-