Tronto Journal

Vol17. Nuit Blanche 奇跡が起こる

3rd Oct,2009

午前中からマーティンは作業を手伝ってくれる。とにかく終わらせないといけない。ラッシュ。

バードハウスがちゃんと立つのかどうか。それが最後の最後まで頭を悩ましていたが、方法を見つけ出し、実行する。

ちゃんと立った。でもちょっとフラフラ。あとで、大変なことになる。

庭も完成。

こうして、午後4時頃に12台全ての自転車が出来上がった。全てを外に出して、会場まで運ぼうと準備していた。その時である。突然の雨、そして、突然の嵐、雷、穏やかだった天気は一瞬にして変化し、今回の原さんのキュレーションのテーマである、災害、サバイバル状態にいきなり突入。僕は、突然の雨で避難していたのだが、帰ってきてみると、バードハウスが根元から折れ、他の自転車たちもぶっ壊れていた。写真写すどころではなかった。しかも、もうマーティンは自分の工房に帰っていた。どうにか、そこらへんにいるスタッフたちと修理をするが、時間が無い。マジでやばい。泣きそうになるが、もうなんとかやるしかない。原さんに電話すると、「もう修理していること自体も作品にしていこー!」なんて興奮して言ってくるもんだから、こちらもその気になって、元気を取り戻し、会場へ。

観客は熱狂的に迎えてくれた。行列が続き、人々が走って自転車にまたぎ、乗る。なんともいえない幸福な時間が過ぎる。しかし、自転車は荒い運転のおかげでどんどん壊れる。それを僕は直す。それが12時間のうちの10時間ほどだった。こちらも体はへとへと。しかし、スタッフたちは僕の作品を気に入ってくれて、自信を持って観客に僕の作品を説明している。それをみて泣きそうになった。しかし、もうどうにも修理できなくて、困っていた。

その時、行列の奥から、シルバーに光る女性の姿が!それはマルティーナであった。心配してくれて、わざわざ様子を見に来てくれたのだ。その時点で、なんか感動して、訳のわからない状態に。もう一度、自転車たちも元気を取り戻し、さらに祭りは続く。こんな祭りはうまれて初めてだ。みんなが幸せに包まれている。

とにかくボロボロになったが、無事に祭りは終わらせることができた。最後の掃除が終わったのが、午前8時半。12時間以上に及ぶ。夢のような出来事であった。僕たちのゾーンCというチームの作品はどれもかなりの好評だったらしく、原さんと興奮して抱き合った。こうやって、チームで長い期間仕事をするというのもある意味初めてだったので、そのことがもたらす幸福を知ることができたのは本当に大きな成長だったと思う。マーティンも僕の作品を心から喜んでくれていた。何かが全て変化したような、衝撃的な体験が僕を襲った。

0円ハウス -Kyohei Sakaguchi-